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プロデューサーとは?その醍醐味 予算の読み方キャストとスタッフ上映イベントの実践
     

プロデューサーとは?その醍醐味【2004/02】

 低予算だからこそプロデューサーが重要なはず。その醍醐味を見ていきます。

本当は映画プロデューサーになりたかった

 実はプロデューサーとしては、特に大きな実績を残しているわけでもない私がこのような文章を書くのもおこがましい話だと思っている。だが、脚本などの他のパートに比べて入門書などが見当たらないこと、過去に映画プロデューサーになりたかった思いもあり、ここのコーナーを作った。これをきっかけに少しでもプロデューサーという役割に興味を持ってくれれば幸いである。

プロデューサーという役割

 今では手に入らなくなってしまった名著「別冊宝島・映像メディアの作り方」(JICC出版局・当時)は、ページの1/10を割いてプロデューサーの仕事を解説した当時としては画期的な映像制作入門書だった。
 そこに、映画プロデューサーの佐々木史郎氏の談話が載っており、プロデューサーの条件として、「金が集められるか」「シナリオが読めるか」「監督にとって最初の他人になれるか」「監督に対し敵であると同時に味方になれるか」「どんなタイプの作品でも作れるか」「情況を活性化できるか」という6つが掲げられていた。 今では、低予算の中で作品が作られることが多くなってきたから、予算の中で「いいキャストとスタッフを集められるか」という項目がこれに加わることになるのかも知れない。
 そもそもかつてはお金を持っていた人(それが例え会社の金であっても)がプロデューサーになっていたのであるが、今は製作プロダクションが映画会社やら局やら代理店から製作を請負う形が主流のスタイルなり、映画のクレジットにもプロデューサーを表すものとして、製作総指揮(エグゼクティブプロデューサー)、製作統括、製作、プロデューサー、ラインプロデューサー、アソシエートプロデューサーなどが表記されている。これらの役割上のカテゴライズは不可能に近い。ただ大きくは、製作現場の実行部隊としての言ってみればブルーカラーのプロデューサーと資金を出してその商品価値を形づくるホワイトカラーのプロデューサーに分かれると考えるとわかりやすい。映画だと前者をプロデューサー、後者をエグゼクティブプロデューサーとか製作総指揮とクレジットすることが多い。
 ここでは、
製作現場の実行部隊としてのプロデューサーの視点で個人製作や低予算作品のプロデューサーの魅力と役割を見ていきたい。

映像を企画から公開(または納品)までコントロールする

 プロデューサーの魅力と役割は、一言でいえば 「映像を企画から公開(または納品)までコントロールするということである。パーソナルインデペンデント作品の場合、実質的に監督の資金によって作られることが多いので、ここにプロデューサーという役職があっても商業的なプロデューサーとは少し違う権限の少し弱いクルーの調整役としてのプロデューサーという立場になることが多いだろう。また、商業的作品であっても低予算の場合、プロデューサーの予算の組み方によって作品のクォリティは大きく変わる。
 監督が資金を出すにせよ、何らかのスポンサーが資金を出すにせよ、作品には予算の枠があるわけだ。プロデューサーをやるからには、まずはここを押さえたい。予算、期間 の中で監督が考えていることすべてが実現するわけではない。予算の立て方は簡単で、見積書(予算書)に書き込めばいいのである。これをやらずに頭の中だけで金額を想定しているから、車輛費とか忘れている予算が後からいっぱい沸いてきて予算オーバーになる。逆に言えば、書かないでもシナリオを読んだだけで予算が
頭の中に浮かぶのがプロともいえる。いずれにせよ、潤沢な予算はないことが多いので、どこに予算の焦点を絞るかを考えることも必要になるだろう。
 シナリオについては、別のコーナーを参照していただくこととするが、プロデューサーならではのシナリオの読み方としては、見せ場やトーン(売り物になるか)→予算→(それを実現するための)スタッフキャスト→さらなる付加価値のアイデアという流れになると思う。もちろんこれは作品によって考える順番が若干入れ替ったりする。
 監督やスタッフとの関係性で、よく言われる言葉として、「プロデューサーが現場で遊んでいるのはうまくいっている証拠」というものがある。以下の製作管理に関係するが、作品に夢を持たせれば、プロデューサーが走り回らなくても、監督やスタッフ、キャストは突き進んでくれる。私の個人製作によるプロデュース作「東京は今、タコニナッタ」は、映像学校の実習作品として惜しくも落選したシナリオが発端だった。そのシナリオに魅力を感じていた私は、自主製作としてプロデュースを提案した。ここでの監督やスタッフは、いわば実習入選作を正規軍に例えるとゲリラ軍である。「ゲリラ軍が正規軍以上の評価を受ける作品を作るってカッコ良くない?」などといってモチベーションをあげたわけである。締切りがない分その作品は丁寧に作り上げられ、ゆうばり映画祭での受賞につながった。もちろん、何よりも安い予算でそれに応えようとした監督、スタッフ、キャストの熱意がこの作品の宝であり、感謝する他ないし、ある意味子供を騙している大人のような感じもなくはないが、参加した皆にとって満足いく結果が得られたのは嬉しいものだ。

製作管理のポイントは一歩でも前に進むこと

 映像学校で講師をしていると、学生の制作する作品に対してある一定の範囲でプロデューサー的な意見を述べていくことになる。と同時にいかに完成まで漕ぎ着けるかというのも重要なポイントである。様々な経験を通じて思うが、あまりに無謀な企画に対して「待った」をかけるのも必要だし、安全な企画に対し、無謀なチャレンジを強要するのも時には必要となる。
  ただ、それらのやりとりをしていく中で最も重要なことは、製作状況が一歩でも前へ進むことである。シナリオが進まない、撮影が進まないという状況は、何よりも関わる人々のモチベーションを低下させる。かつての伝説的なプロデューサーの逸話を色々と聞くことがあるが、それにまつわることが多い。ましてや、ほとんど手弁当の製作環境にあった場合、モチベーションは製作費以上の財産である。例は悪いが、戦争と同じで勝っている間は我慢できるのである。

未来のそして理想のプロデューサーに

 監督という立場に戻って考えると、理想的なプロデューサーというのは、予算内でいい作品を作るプロデューサーより追加予算を出させるプロデューサーである。だが、今の世の中でそんな旨い話は皆無だろう。だが、関わってくれたキャスト、スタッフが、そしてもちろんお客さまが満足いく結果を得られればいいのである。ゴールは見えている、はっきりと。 そしてゴールに導く醍醐味を是非味わってみて欲しいと思っている。

  

 
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